2014年4月17日木曜日

中産階級の素養が高まる

不動産がこれだけ伸びてきたのであるが、庶民に住宅が行き渡ったかと言うと、伸び率は高くないと思う。これは統計上で見てはいないが、次々と立ち上がる近くのマンションを見ていると、相変わらず投資目的が多いし、内装工事が終わるとすぐさま賃貸しをけじめ、一軒の家に数人が同居している。(中国では各部屋に鍵がかかる型式が多いので、トイレ、風呂場、台所を共用して、部屋を分けている。部屋はリビングを中心として回りに配置されている)次々建設と言うけれど、結構古い建物を壊し、新しくしているところもあるので部屋数は増えているのであろうが、一杯になっているマンションは見たこともない。また、地方の農村から都市に来ている人もいるのであるが(農村の家はどうなるのか?)私の会社の社員のように大学を出て外資系に勤め三十年月賦で銀行から借り入れし、家を持てる人は全体から見ればまだまだ限られている。

給料から言って、昨今の不動産の値下がりを考慮しても高すぎる。更に銀行から借り入れるとなると、本人が官庁、ある程度優良な国有企業、または有名な外資系企業に勤務しているか、さもなければ知り合いが銀行や官庁にいないと信用の面から言ってもなかなかローンを組めないでいる。私は、中国が本当の意味で中産階級が豊かになるのは、どれだけ自分の家を持てるかに関わってくると思う。アメリカですら家を持てない人にサブプライムローンで住宅供給という政策が結局破綻している。アメリカも想像以上に貧富の差が進んでいるという一つの証左であると思うが、中国も平米の狭い、中産階級が買いやすい住宅の供給等も始めているので(従来の中国人の感覚から言うと大家族が前提にあるので一〇〇平米以上が中心であったが、最近は頭金も低い六〇平米以下を政府が指導している)これがどれだけ功を奏するかしばらく様子を見る必要があるように思う。

やっとのことでマンションを購入しても、自分の住む部屋のみ簡易的な内装を施し、その他は壁がむき出しのまま、また家具も何もない家など様々であり、家を買うことによって持ち金を使い果たした人も私は沢山見ている。それでも家が先ず欲しいというのが現実のようである。ましてや中国では結婚となると男側か家を用意せねばならないので、男親は、男の子が生まれるとすぐさま貯蓄も開始せねばならない。この意味で、庶民の中でも都市にいる中産階級がまず豊かになるということが中国の将来を占う鍵のように思える。そのことにより中産階級の素養も高まり、それが中国全体を押し上げていくように思える。

この本の中で、中国のことを書いた本にも係わらず、北朝鮮のことに触れた。韓国や台湾に関しても若干触れた。また、私はたびたび権力とは寛容であると書いている。この本を読んだ若い人はどれだけ理解できたかは分らないが、確かに寛容であるが権力者の許す範囲ということは述べてきた。日本は中国のような皇帝独裁の国ではなく、自由と民主主義の国である。そして誰でもが、何を言っても身分は保証されている。拘束されることはない。しかし、この自由の中で、自由だから何でも出来るということが却って本人が目標を失ってしまい、他人との係わり合いも上手くいかず、結果的に社会の犯罪者になってしまうことがあるのも日本の社会の現象である。

中国の庶民生活に触れる中でも同じようなことがあることを書いてきた。政治的には日本の社会と比べるとほんのわずかしか自由がない社会にも係わらず、自由が手に入った途端に、他人との比較が始まる。自由社会の中で努力次第では一見何でも手に入るように見之乱可彼にあって私にはないもの。簡単な物質や食料はすぐさま手に入るように豊かになってきた。ただし安定した生活や地位は簡単に手に入らない。しかし、子供の時から親に至れり尽くせりと面倒を見られてきたので自分の力で自由を謳歌することが出来ないでいる。世間は甘くなかった。中国では「有関係」(ようくあんし、と読む)を他の人と持たねば、どんな社会生活でもスムーズには進まない。子供は、親が築いた「有関係」をどのように築いたかは分らない。ここで私か経験している「有関係」について簡単に触れよう。