2015年2月17日火曜日

国土交通省

ついでにいうと、議員立法の分野でも異変が起こっている。議員立法は閣法の他に、法案を国会に提出するもう一つの方法である。衆議院では二十名(ただし予算を伴うものは五十名)、参議院では十名(ただし予算を伴うものは二十名)の議員と党議決定が得られれば、議員立法として法案を提出できる。しかし、これまで議員立法はあまり活発でなく、割合でいえば、閣法が九割、議員立法は一割位だった。内容的にみても、議員立法は、国会議員、が自分たちの身の回りのことについてつくる立法と思われてきた。

しかし、阪神・淡路大震災をきっかけにつくられた「被災者生活再建支援法」二九九八年)のように、市民が主力となって法案をつくり、これに賛同する議員を超党派でつのり、国会に提出していくという市民立法が登場している。従来の閣法を超える政治立法、そして議員立法を超える市民立法に注目したい。これは最終章でふたたびみることにしよう。

日本の公共事業はあまりにも問題が多い。筆者たちは『公共事業をどうするか』でその特異な構造を明らかにした。政官財複合体の中心で、田中角栄的な利益誘導政治の元凶であり、不況になるとばらまきがくり返される。全国総合開発計画と道路、ダムなど十六本の中長期計画、財源二般予算、財政投融資、特別会計、目的税など)、そして組織・人事(国、自治体、特殊法人、公益法人、あるいは天下りまで)のすべてが官僚に握られてきた。

公共事業を所管する官庁、とりわけ建設、農水、運輸の各省こそスリム化、透明化などがもっとも必要とされる官庁である。さすがに、行革会議でも公共事業をどうするかは大きな争点になった。委員のおおかたの意見は分割だったが、建設省などをバックにした抵抗も根強く、もめにもめた。中間報告段階の決着をつけたのは橋本首相だった。

中間報告に向けて最後の詰めを行った集中討議のホテル合宿で、橋本首相が「昨夜一晩考えてみたが、こういう案もある」として披露したのが、建設省から河川局を分離して農水省にくっつけて「国土保全省」をつくるという案だ。そして建設省の残りと運輸省、国土省、北海道開発庁を合体して「国土開発省」にする。