2015年9月16日水曜日

中高年活用の戦略的重要性

企業としてそうした条件を整えるためにできる事は多い。産休、育児休暇、労働時間の弾力的管理、子供が育てられるような夫婦単位での人事配置や配転など多くの工夫の余地がある。これらはいずれもそれなりのコストがかかり、短期的には企業の生産性にとって負担になる場合が多い。しかし、有能な女性の人的資源を放棄してしまうか、それとも多少の短期的コストを負担して長期にそれを育てかつ活用するかの選択を考えた場合、これからの企業にとってはますます後者の選択がより合理的になってくるだろう。実際、近年、有能な女性のキャリア継続を可能にするためにさまざまな支援策を講ずる企業がふえている。

将来はキャリア継続が一本線ではなく、一たん家庭に帰ってフルタイムで子育てをし、その後フルタイムのキャリアとして労働市場に再び登』場するという複線型のキャリアも出てくるかも知れない。実際、私共が行った全国的な意識調査では若いコーホート世代ほどそうした複線による本格的な両立型への志向性が高い事が認められた。

いずれにせよ女性の人的資本をいかに育て活用するかはこれからの日本の社会にとっても経済にとってもきわめて大きな戦略課題であるといえよう。この問題に関してはさらに労働時間規制をはじめとする政府のさまざまな規制が大きな影響もしくは制約をもたらしているが、この問題については後でふれる事にしたい。

人口と労働力の高齢化が進む中で中高年者の人的資本の活用がますます大きな戦略的重要性を持ってきていることはいうまでもない。人口構造が高齢化し、高齢者の比重が高まってゆくということは、その中でどれだけの人が労働力として働くか、そしてそれらの人々が質的にどれだけ密度と水準の高い働きをするかという問題が、日本の経済社会の将来の発展の可能性を左右する、ますます大きな鍵になるという事である。

高齢者とひと口に言うが、それはどのような年齢層の人々を指すのであろうか。今日、日本の多くの企業は六〇歳を定年としている。また、年金の本格的な受給開始年齢は六五歳である。一方、企業では五〇歳を過ぎると子会社へ出向させたりさまざまな人事の措置を講ずるところが少なくない。そうしたことを考えると五十代後半から六十代前半くらいが高齢労働者としての扱いを受ける微妙な年齢層であるようだ。