2012年4月11日水曜日

地方分権 権限移譲の各論こそ肝心だ

全国知事会による争点化戦略の効果であろう。地方分権改革が衆院選でかつてないほど関心を集めている。国と地方の役割分担を見直し、国の権限や財源を地方に移すのが分権改革だ。麻生首相は「内閣の最重要課題」と位置づけるが、権益を守りたい省庁や族議員の抵抗のため停滞感が漂う。

現状打破を狙う大阪府の橋下徹知事らの先導で、全国知事会が与野党の政権公約(マニフェスト)の点数評価という攻勢をかけた。これに押されて、各党とも分権重視の姿勢を打ち出した。改革推進の格好の機会だ。肝心なのは、総論でなく各論である。各党は具体策を競ってほしい。

当面の焦点は、政府の地方分権改革推進委員会が出した勧告の扱いである。地方への権限移譲、国の出先機関の統廃合、地方行政を法令で縛る「義務付け・枠付け」の大幅緩和などだが、どこまで実現できるかは不透明だ。

自民党は、勧告を実現するための新地方分権一括法案の今年度内成立を期すとした。だが、どの権限を移し、どの出先機関を統廃合するのか、精査されておらず、具体性と説得力を欠いている。

「地域主権国家」を唱える民主党は、国からのひも付き補助金を廃止し、使途を限定しない一括交付金に組み替えるという。地方の自由度を高める狙いは良いが、教育・社会保障費を公共事業などに流用させない歯止めも必要だ。

出先機関の「原則廃止」という主張も、あまりに乱暴すぎ、かえって各論を検討していない未熟さを露呈している。道州制について、自民党は、基本法の制定後「6~8年」と導入時期を明示した。公明党も「概(おおむ)ね10年後」と足並みをそろえた。これに対し、共産党は導入に反対し、社民党も否定的な立場だ。

民主党は、基礎的自治体(市町村)の強化を優先するが、その先の国家像が明確ではない。道州制志向なのか、都道府県制の維持なのか、説明が不可欠だろう。ただ、道州制については、知事会内でも賛否が分かれており、国民的合意は形成されていない。中長期的課題である道州制の検討ばかりが先行し、肝心の地方分権が滞っては本末転倒である。腰を据えた議論が必要だ。

分権に欠かせない地方への税源移譲に関しては、自民、民主両党とも数値目標を示していない。分権は、国のかたちを変える大事業だ。税財源の本質論を避けるなら改革姿勢に疑問符がつく。