2013年7月10日水曜日

外資主導の東京市場

ヘッジファンドや、商品取引アドバイザー、資産運用担当者などが、目立って為替取引を増やしている。IT(情報技術)バブル崩壊で〇一年には勢いをそがれていたファンド勢が、〇四年にかけて完全復活を果たしたのである。彼らの勢いは向かうところ敵なしだったが、好事魔多し。BISの市場調査の直後の〇七年八月にパリバーショックが、次いで〇八年九月にリーマンーショックが世界の金融市場を襲い、野放図な取引の膨張にブレーキがかかった。このほか政府など公的機関が外貨準備と別枠で運用するファンドがある。ソブリンーウェルスーファンド(国富ファンド)と呼ばれ、急拡大している。一〇年版「通商白書」によれば、〇九年末の運用資産規模は三兆八千億ドル。原油高に伴うオイルマネーを背景にした中東勢がそのうち四二こハ%を占める。

〇七年の調査で東京外為市場の一日当たり取引高は二千三百八十四億ドル。前回〇四年の調査に比べて一九・九%増えたが、世界の市場全体に占めるシェアは八・三%から六・〇%に低下した。二大市場はロンドンの三四・一%とニューヨークの一六・六%で、東京はスイスの六・一%にも抜かれ三位から四位に低下した。その東京市場で主導権を握るのは外資系金融機関である。取引全体に占めるシェアは三年間で四ポイント低下したものの六七・一%を占め、日本勢の三一・九%を大きく上回っている。日本株の売買に占める外国人投資家の比率が六-七割に達するなか、彼らの注文は外資系金融機関に集中している。

それと並行して、大手金融機関への取引集中が加速している。東京市場の取引高に占める上位十社の比率は七八・九%と、〇四年の調査に比べて四・ニポイント上昇した。上位二十社ともなると市場シェアは九二・四%にものぼる。外貨の世界にかかわりを持った人は、新聞などに載った大手金融機関のコメントから目が離せないということになる。為替取引と並んで、金融の主な舞台になりつつあるのがデリバティブ(金融派生商品)であ
る。BISが外為市場調査と同じ○七年四月に実施したデリバティブ市場調査の結果をみれば、一目瞭然だ。

為替と金利を合わせたデリバティブの一日当たり平均取引高は二兆九百億ドルと、〇四年調査の一兆二千二百億ドルに比べて一・五倍に増加した。デリバティブとは株式、金利、通貨などの金融商品を基に、将来の予想価値を売買したり、異なった金融商品同士を交換し合ったりする取引のことだ。これらのデリバティブ取引は、国内よりも海外との間で行われることが多い。東京市場をとってみても、外資系金融機関のシェアは〇一年の三二・〇%から、〇四年には五〇・六%となり、〇七年には六八・五%に膨らんだ。デリバティブの基になっている資産(原資産)をみると、金利関連が多いが、急速に多様化している。BISが実施した〇七年六月末時点の残高調査によると、東京市場では金利関係が全体の八割を占めた。

金利・外為関連のデリバティブは〇四年の前回調査に比べて四〇%増えた。その一方、債券や融資の破綻リスクを取引するクレジット(信用)デリバティブが実に十倍強、株式、商品関連はそれぞれニー三倍と拡大した。〇八年八月に原油先物相場が一バレル一四七ドル台の最高値を付ける高騰を演じた背景にも、デリバティブの存在がある。〇八年九月のリーマンーショックを機に世界の金融市場が瞬く間に連鎖危機に陥ったのも、クレジットーデリバティブ取引が網の目のように絡まっていたためである。